(第2条)
「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人間関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われる者を含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
(注1)「一定の人間関係」とは、学校の内外を問わず、同じ学校・学級や部活動の児童生徒や、塾やスポーツクラブ等当該児童生徒が関わっている仲間や集団(グループ)など、当該児童生徒と何らかの人間関係を示す。
(注2)「物理的な影響」とは、身体的な影響のほか、金品をたかられたり、隠されたり、嫌なことを無理矢理させられたりすることなどを意味する。
(注3)けんかやふざけ合いであっても、見えない所で被害が発生している場合もあるため、背景にある事情の調査を行い、児童生徒の感じる被害に着目し、いじめに該当するか否かを判断する。
(注4)学校は、いじめられた児童生徒の立場に立って、いじめに当たると判断した場合にも、見守る・「いじめ」という言葉を使わず指導するなど、柔軟な対応による対処も可能である。(軽い言葉で相手を傷つけたが、すぐに加害者が謝罪し、教員の指導によらずして良好な関係を再び築くことができた場合など)ただし、これらの場合にあっても法が定義するいじめに該当するため、事案を法第22条の学校いじめ対策組織へ情報共有することは必要である。
心理的苦痛 |
・冷やかしやからかい,悪口や脅し文句,いやなことを言われる ・仲間はずれ,集団による無視をされる ・パソコンや携帯電話等で,誹謗中傷や嫌なことをされる |
物理的苦 痛 |
・金品をたかられる ・金品を隠されたり,盗まれたり,壊されたり,捨てられたりする |
暴力的苦痛 |
・軽くぶつかられたり,遊ぶふりをして叩かれたり,蹴られたりする ・ひどくぶつかられたり,叩かれたり,蹴られたりする ・嫌なことや恥ずかしいこと,危険なことをされたり,させられたりする |
①いじめは、どの子どもにも、どの学校にも起こりうるもので最も身近で深刻
な人権侵害事案である。
②悪口や無視、仲間はずれ等の「心理的苦痛」を伴ういじめは、多くの児童生
徒が入れ替わりながら被害も加害も経験することがある。
③「暴力を伴わないいじめ」であっても、何度も繰り返されたり多くの者から
集中的に行われたりすることで、「暴力を伴ういじめ」とともに、生命又は
身体に重大な危険を生じさせうる。
④いじめの加害・被害という二者関係だけでなく、「観衆」としてはやし立て
たり面白がったりする存在や、周辺で暗黙の了解を与えている「傍観者」の
存在にも注意を払い、集団全体にいじめを許容しない雰囲気が形成されるよ
うにすることが必要である。
(1)いじめの防止
いじめは、「どの子どもにも、どの学校でも起こりうる」ものであるが、決して許さ れない卑怯な行為であり、いじめを行ってはならないことを毅然とした態度で指導して いく必要がある。
このため、学校教育全体を通じ、児童生徒の豊かな情操や道徳心、自分の存在と他人の存在を等しく認め、お互いの人格を尊重し合える態度など、心の通う人間関係を構築する能力の素地を養うことが必要である。また、いじめの背景にあるストレス等の要因に着目し、全ての児童生徒が安心でき、自己有用感や充実感を感じられる学校生活づくりも未然防止の観点から重要である。
あわせて、いじめの問題の取組を学校、家庭、地域が一体となって推進
し普及啓発する必要がある。
(2)いじめの早期発見
いじめの問題への基本的な考え方を周知徹底するとともに、教員への研修
等を通じ、さらなる理解を図る。
また、定期的なアンケート調査や教育相談の実施、電話相談窓口の周知
等により、児童生徒および保護者がいじめを訴えやすい体制を整える。
くわえて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーをはじ
めとした幅広い人材を活用し、子どもが悩みを相談できる体制の充実等を
図る。
(3)いじめへの対応
いじめがあることが確認された場合、学校は直ちに、いじめを受けた児童生徒やいじめを知らせてきた児童生徒の安全を確保し、いじめたとされる児童生徒に対して事情を確認した上で適切に指導する等、組織的な対応を行うことが必要である。また、家庭や教育委員会への連絡・相談や、事案に応じ、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー、弁護士、医師、警察官経験者など外部専門家等、関係機関との連携を図る。
このため、教職員は平素より、いじめを把握した場合の対処の在り方について、理解を深めておくことが必要であり、また、学校における組織的な対応を可能とするような体制整備が必要である。
(4)家庭や地域との連携について
学校・教員を主体としつつ、社会全体で子どもを守り、育てていくため、学校と家庭・ 地域が連携・協働できる体制づくり等をさらに推進する。また、家庭との連携を図るため、保護者等に向けた、いじめの問題に関する普及啓発を行う。
(5)関係機関との連携について
いじめの問題への対応においては、学校や教育委員会においていじめる児童生徒に対して必要な教育上の指導を行っているにもかかわらず、十分な効果が困難な場合には関係機関(警察、児童相談所、医療機関、法務局等)との適切な連携が必要であり、平素から関係機関の窓口や連絡会議の開催など、情報共有体制を構築していくことが必要である。
これらの「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。
①.「早寝・早起き・あさ・し・ど・う」運動の推進
子どもたちの睡眠不足や生活リズムの乱れは集中力・記憶力・学習能力に
かかわるとともに感情のコントロール機能に障害をきたすといわれている。
近江八幡市において、平成18年から始まったこの基本的生活習慣の定着を
図る運動(早寝早起き、あいさつ、食事、読書、運動)を、家庭・地域と連
携し、子どもが心身共に健康に学校生活が送れるように推進する。特に、睡
眠の大切さを子どもたちや保護者に呼び掛け、早起きから生活のリズムをつ
くっていくことを重視していく。また、体力の向上やからだとこころの調和
のとれた発達を目指していく。
②.「わかる授業」の工夫
授業規律を定め、きちんと授業に参加し、基礎学力を身につけ、認められ
ていると実感を持てる子どもたちを育てる。「わかる授業」「魅力ある授
業」の創造に努め、基礎基本の定着を図るとともに、学習に対する達成感、
成就感を大切にする。
学力の重要な3つの要素は「基礎的・基本的な知識・技能」「知識技能を活
用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力」「主体的に学習
に取り組む態度」であり、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう授業改
善に努める。
③.豊かな情操と道徳心を培う取組
・人権教育の充実…それぞれ様々な立場で生きる人たちの姿や立場を理解
し、人権教育の基盤である生命尊重の精神や人権感覚を育み、共に生きよ
うとする意識の高揚を図る。
・道徳教育の充実…子どもたちは心を揺さぶられる教材や資料に出会い、
「気高さ」や「心づかい」「優しさ」等を学ぶ。よりよく生きるためにど
のような行為を選択すべきか一緒に考える。
・体験活動の充実…自己と向き合い、他者、社会、自然との直接的な関わり
の中で、生命に対する畏敬の念、感動する心、共に生きる心に自分自身が
気づき発見し体得する体験活動を推進する。
④.自己有用感や自己肯定感を育む取組
子どもの一人ひとりの自己有用感や自己肯定感を育む教育活動を推進す
る。
○一人ひとりが活躍できる学習活動
・子どもの自発的な活動を支える委員会活動の充実
・子どもが主体的に取り組める学習活動や自主学習プリントの工夫
・異学年交流の充実(縦割り活動・ペア学年活動・クラブ活動等)
○人との関わりを身に付けるためのトレーニング活動
ソーシャルスキルトレーニングを行い、自分と他人では思いや考えが
違うことに気づかせ、そんな中に認められる自分が存在することを感
じることで、自尊感情を育むことができる。
○学校の全教育活動を通して積極的に子どもが発言できる場を設定してい
く。
○人権感覚を育成できるような取組を各委員会活動や児童会活動で仕組
む。
○道徳教育や体験活動を充実させ、社会性や自主性を育むとともに、「正
義」と「思いやり」の気持ちを育む。
○「豊かな人間関係を育む力」を培うよう、特別活動の年間計画を立て
る。
○安心して自分を表現できる年間カリキュラムの作成
年間カリキュラムにおける活用する力の項目や内容を明確にし、見通し
を持って学習に取り組める発問や指導方法を工夫する。
○人とつながる喜びを味わう体験活動
友だちとわかり合える楽しさやうれしさを実感できる確かな力の育成
と相互交流の工夫を行うことで、コミュニケーション力を育成する。ま
た、学校行事や児童会活動、総合科的な学習の時間や生活科等で道徳性
を育てるための体験活動の推進を行う。
⑤.インターネットを通じて行われるいじめに対する対策
日常的に情報、モラル、誹謗中傷、スマートフォン、パソコンについての危険性、フィルタリングサービス利用の徹底やライン等の適切な活用について、子ども、保護者両者に働きかける等、危険から身を守る知識と技術を身につけるよう啓発していく。
また、インターネットを通じて行われるいじめに対しては、関係機関と連携して実態 把握に努め、いじめの防止と効果的な対処ができるよう、資料の配付や研修など啓発活動を実施する。
⑥.教職員の感性を高める研修の推進
教職員に対して、いじめ防止等に関する研修の実施等、資質能力の向上に努める。全ての教職員の共通理解を図るため、朝の打合せ、職員会議、子どもを語る会などあらゆる機会に、具体的な事例を紹介し、実際におこった場合、組織で迅速な対応ができるように取り組む。
⑦.保護者や地域への働きかける
気軽に相談できるように、子どもとともに保護者・地域との関係づくりを大切にする。効果的な対処ができるよう、いじめに関する資料の配付や研修など啓発活動も実施する。また学校の取組をホームページ等で発信し、開かれた学校づくりに努める。
①.教育相談週間についての取組
年2回(6月、11月)「こころのアンケート」をもとに個人面談を行い、子どもの悩みや人間関係、いじめに対しての相談などを行い、問題の早期発見、早期解決を図る。
②.いじめ相談体制についての取組
児童生徒およびその保護者がいじめの相談を行うことができるよう臨床心理士や相談員を配置し、相談窓口の周知を図る。周知の際には、相談の結果、いじめの解決につながった具体的な事例を示すなど、児童生徒に自ら周囲に援助を求めることの重要性を理解させることに努める。
・ストップいじめアクションプランを活用し、県教育委員会作成のチェッ
ク項目
「子どもたちのSOSをキャッチしよう」等を有効活用し、学校におけるい
じめの防止等の取組の充実を促す。
・日常的に鋭いアンテナをはり、些細な言動・表情・行動の変化、日記や
ノート類での子どもの様子を見逃さないようにする。
・家庭訪問で聞いた話や保健室での様子などさまざまな情報提供を大切に
し、こまめに記録をとるようにする。
①.いじめ防止対策委員会の役割、構成員
いじめが起こったとき、またはいじめ防止に関する措置を実効的に行うた
め、校長・教頭・教務(主幹教諭)・生徒指導主任・教育相談主任・養護教
諭・当該学級担任・当該学年主任・SC・SSC等による対策委員会を設置
する。また、いじめに限らず問題を抱える児童の課題解決を図るため、ケー
ス会議を充実させる。
②.いじめを確認したときの対応
学校の教職員がいじめを発見し、または相談を受けた場合には、速やかに、いじめ防止対策委員会に対し該当いじめに係る情報を報告し、学校の組織的な対応につなげる。
また、各教職員は学校が定めた方針等に沿って、いじめに係る情報を適切にきろくする。いじめ防止対策委員会において情報共有を行った後は、事実関係の確認の上、組織的に対応方針を決定し、被害児童生徒を徹底して守り通す。加害児童生徒に対しては、当該児童生徒の人格の成長を旨として教育的配慮の下、毅然とした態度で指導するものとする。これらの対応について、教職員全員の共通理解、保護者の協力、関係機関、専門機関との連携を図りながら取り組む。
・いじめを発見したり訴えを聞いたりした者は、すぐに学年主任、生徒指導
主任、管理職に報告する。
・校長指揮のもとに、速やかにいじめ対策委員会を開き、いつ、誰が、どの
ように事実確認するのか役割分担などの打ち合わせを直ちに行う。
・事実確認は必ず個別で行い、内容の照合を行う。ただし、極端に長時間の
聞き取りを行わないなど、子どもの状況には配慮する。
・速やかに事実確認の集約を行い、短期・中期・長期に分けて対応策を立て
る。
・対応策を全教職員が共通理解するとともに、該当の子どもやその保護者に
説明し、理解と協力を求める。
・教育委員会に適切に報告する。
・関係機関や地域の協力も得ながら、いじめ解消に向けた具体的な道筋を示
す。
・犯罪行為と取り扱われるものと認めるときは警察と連携する。
いじめは、単に謝罪をもって安易に解消とすることはできない。いじめが「解消している」状態とは、少なくとも次の2つの要件が満たされている必要がある。ただし、これらの要件が満たされている場合であっても、必要に応じ、他の事情も勘案して判断するものとする。
①いじめに係る行為が止んでいること
被害者に対する心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットな
どを含む)が止んでいる状態場相当に期間継続していることが必要である、相
当の期間とは、少なくとも3ヶ月を目安とする。ただし、いじめの被害の重大
性等からさらに長期の機関が必要であると判断される場合は、この目安にか
かわらず、教育委員会または学校のいじめ防止対策委員会の判断により、よ
り長期の機関を設定するものとする。学校の教職員は、相当の期間が経過す
るまでは、被害・加害児童生徒の様子を含め状況を注視し、機関が経過した
段階で判断を行う。行為が止んでいない場合は、改めて、相当の期間を設定
して状況を注視する。
②被害児童生徒が心身の苦痛を感じておらず、安心・安全な生活が送れてい
ること
いじめに係る行為が止んでいるかどうかを判断する時点において、被害児
童生徒がいじめにより心身の苦痛を感じていないと認められることが必要で
ある。被害児童生徒本人およびその保護者に対し、心身の苦痛を感じていな
いかどうかを面談により確認する。
学校は、いじめが解消に至っていない段階では、被害児童生徒を徹底的に
守り通し、その安全・安心を確保する責任を有する。学校のいじめ防止対策
委員会においては、いじめが解消に至るまで被害児童生徒の支援を継続する
ため、支援内容、情報共有、教職員の役割分担を含む対処プランを策定し、
確実に実行する。
上記のいじめが「解消している」状態とは、あくまで、一つの段階に過ぎ
ず、「解消している」状態に至った場合でも、いじめが再発する可能性が十
分にあり得ることを踏まえ、学校の教職員が、当該いじめの被害児童生徒お
よび加害児童生徒については、日常的に注意深く観察する。
③.いじめられた児童又は保護者への対応
・まずは、いじめられた児童の話を十分に聞き、「絶対に守りきる」ことを
約束して安心感を与える。
・解決にむけて、本人及び保護者に具体的プランを示して協力を得る。
・状況に応じて、スクールカウンセラーなどの専門家と連携した対応を行
う。
・いじめをした加害者を別室で学習させるなど、いじめを受けた子どもが安
心して学習できる環境づくりに努める。
・いじめを受けた子どもが緊張して教室に戻れない場合は、別室で授業を受
けるなど学習の保障に努める。
・いじめ解消後も注意深く見守り、安心感をもたせながら継続的な支援を行
う。
・被害、加害の保護者には、必ず「事実の報告」を行い、「解決に向けた学
校の取組」について、理解と協力を求める。
・いじめの経過を把握し、いじめが解消されたと見られる場合も、継続して
状況把握に努める。
・いじめ対策委員会判断のもと、状況に応じて学級、学年、全校単位で保護
者会の開催を検討し、開催する場合には、いじめの事実と学校の対応、取
組について説明し、理解と協力を求める。
④.いじめた児童への指導又は保護者への対応
・時間、場所、内容、理解、人数、背景など正確な事実確認をじっくり行
う。
・中立的、受容的に対応し、しっかり耳を傾ける姿勢で話を聞くが、いじめ
は許されない事という毅然とした態度で臨む。
・いじめの言動の背景にあるものをつかみ、その課題の解消を図る。
・状況に応じて、スクールカウンセラーなどの専門家と連携した対応を行
う。
・相手の辛く悔しい気持ちを理解させ、心からの謝罪が行われるよう導く。
・償いの気持ちが行動であらわされるよう支援し、再発防止に努める。
・保護者に来校を求め、いじめられる側の思いに至るまで話し合う。また徹
底した指導、支援を行う。
・いじめ解消後も継続した見届けを行う。
・必要に応じて出席停止などの処置を検討する。
⑤.集団への働きかけ
・見て見ぬふりをしたり、自分とは関係のないことと考えたりすることは、
いじめを容認したことになるという事実を深く考えさせる。
・自分の問題としてとらえ、仲介者としての働きを含め、今後、自分はどう
すべきか深く考えさせる。
・学級活動等で学級としてどうすべきかなど、しっかり考える機会をつく
る。
・学級の進んだ取組を学年や全校に広げ、再発防止に努める。
⑥.ネット上のいじめのへの対応
・もし、ライン等への不快な書き込みが発覚した場合、子機込み内容を保
存、プロバイダへの削除依頼を行う。
・書き込みの内容によっては、警察や法務局との連絡調整を行う。
・書き込まれた子どもには、状況に応じて心のケアを外部機関と連携しなら
検討、実施していく。
・書き込んだ子どもが特定できる場合は、本人への指導、保護者への連絡を
実施し、再び同じ事が起こらないよう家庭で協力してもらう。
(1)重大事態の発生と調査
①.調査を要する重大事態の例
○ 生命、心身又は財産に重大な被害が生じた場合
・児童生徒が自殺を企図した場合
・身体に重大な傷害を負った場合
・金品等に重大な被害を被った場合
・精神性の疾患を発症した場合
○ 相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている場合
・不登校の定義を踏まえ、年間30日を目安とするが、児童生徒が一定期
間連続して欠席しているような場合も、学校の設置者又は学校の判断で
重大事態と認識する。
○ その他の場合
・児童生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申立てが
あった場合、重大事件が発生したものとして報告・調査等にあたる。
②.重大事態の報告
○ 重大事態を認知した場合、直ちに発生の報告を行う。
・学校 → 教育委員会 →市長および県教育委員会
③.調査の主体
○教育委員会は、学校からの報告を受けた際、その事案の調査を行う主体
や、どのような調査組織とするか判断する。
○ 学校が主体となって調査を行う場合、教育委員会は、必要な指導、人的措
置等の適切な支援を行う。
○ 教育委員会が主体となって行う場合は、次の通りである。
・学校主体の調査では、重大事態への対応及び同種の事態の発生の防止に
必ずしも十分な結果を得られないと判断する場合
・学校の教育活動に支障が生じるおそれがあるような場合
④.調査を行う組織
○学校が組織した「いじめ防止対策委員会」又は教育委員会が設置した「い
じめ対策専門会議」て調査を行う。ただし、構成員の中に、調査対象とな
るいじめ事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有する者が
いた場合、その者を除き、新たに適切な専門家を加えるなど、公平性・中
立性を確保する。
⑤.事実関係を明確にするための調査の実施
○重大事態に至る要因となったいじめ行為が、「いつ頃から」「誰から行わ
れ」「どのような態様であったか」「いじめを生んだ背景事情」「児童生
徒の人間関係にどのような問題があったか」「学校、教職員がどのように
対応したか」などの事実関係を可能な限り網羅的に明確にする。この際、
因果関係の特定を急ぐべきではなく、客観的な事実関係を速やかに調査す
る。
○被害児童生徒・保護者が詳細な調査や事案の公表を望まない場合であって
も教育委員会および学校が、可能な限り自らの対応を振り返り、検証する
ことは必要となる。それが再発防止につながり、または新たな事実が明ら
かになる可能性もある。重大事態の調査は、被害児童生徒・保護者の意向
を的確に把握し、調査方法を工夫しながら調査を進める。
○ いじめられた児童生徒からの聴き取りが可能な場合
・いじめられた児童生徒から十分に聴き取る。
・在籍児童生徒や教職員に対する質問紙調査や聴き取り調査を行う。この
際、個別の事案が広く明らかになり、被害児童生徒や情報提供者に被害
が及ばないよう留意する。
・いじめた児童生徒に対しては、調査による事実関係の確認をするととも
に、指導を行い、いじめ行為を止める。
・いじめられた児童生徒に対しては、事情や心情を聴取し、状況にあわせ
た継続的なケアを行い、落ち着いた学校生活復帰の支援や学習支援等を
行う。
・これらの調査を行うに当たっては、事案の重大性を踏まえて、教育委員
会及び学校法人が、より積極的に指導・支援したり、関係機関ともより
適切に連携したりして、対応に当たる。
○ いじめられた児童生徒からの聴き取りが不可能な場
・いじめられた児童生徒が入院又は死亡した場合、当該児童生徒の保護者
の要望・意見を十分に聴取し、迅速に保護者と今後の調査について協議
し、調査に着手する。
・調査方法としては、在籍児童生徒や教職員に対する質問紙調査や聴き取
り調査等が考えられる。
⑥ いじめられた児童生徒が死亡した時の対応
・児童生徒の自殺という事態が起こった場合の調査のあり方については、そ
の後の自殺防止に資する観点から、自殺の背景調査を実施する。その際、
亡くなった児童生徒の尊厳を保持しつつ、その死に至った経過を検証し、
再発防止策を講ずることを目指し、遺族の気持ちに十分配慮しながら行
う。
・遺族の要望・意見を十分に聴取する。
・在校生及びその保護者に対しても、できる限りの配慮と説明を行う。
・遺族に対して主体的に、在校生への調査の実施を提案する。その際、調
査の目的・目標、調査を行う組織の構成、概ねの期間、方法、入手資料の
取扱い、遺族への説明の在り方、調査結果の公表に関する方針について、
できる限り、遺族と合意しておく。
・資料や情報は、できる限り、偏りのないよう、多く収集し、それらの信頼
性の吟味を含めて、弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家
であるスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー等の専門的知
識及び経験を有する者の援助の下、客観的、総合的に分析評価を行う。
・学校が調査を行う場合において、教育委員会及び学校法人は、情報の提供
について必要な指導及び支援を行う。
・情報発信、報道対応については、プライバシーへの配慮の上、正確で一貫
した情報提供を行う。なお、亡くなった児童生徒の尊厳の保持や、子ども
の自殺は連鎖の可能性があることなどを踏まえ、WHOによる自殺報道への
提言を参考にする。
(2)調査結果の報告及び提供
①.調査結果は、速やかに報告を行う。
○ 調査結果の報告先は、下記の通り。
・学校 → 教育委員会 → 市長および県教育委員会
②.いじめを受けた児童生徒及び保護者に対する情報を適切に提供する。
○ 学校又は教育委員会は、いじめを受けた児童生徒やその保護者に対して、
事実関係 等その他の必要な情報を提供する責任を有することを踏まえ、
調査により明らかになった事実関係について、いじめを受けた児童生徒や
その保護者に対して説明する。
【調査結果を報告する際の留意事項】
・他の児童生徒のプライバシー保護に配慮するなど、関係者の個人情報に十
分配慮する。ただし、いたずらに個人情報保護を楯に説明を怠るようなこ
とがあってはならない。
・質問紙調査に先立ち、調査結果については、いじめられた児童生徒又はそ
の保護者に提供する場合があることをあらかじめ念頭に置き、調査対象と
なる在校生やその保護者に説明する等の措置が必要である。
・学校が調査を行う場合においては、教育委員会及び学校法人は、情報の提
供の内容、方法、時期などについて必要な指導及び支援を行う。
(1)再調査
○ 重大事態の報告を受けた市長は、当該報告に係る重大事態への対処又は当
該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、
報告結果について再調査を行うことができる。
○ 再調査を行う機関は、当該いじめ事案の関係者と直接の人間関係又は特別
の利害関係を有する者ではない者(第三者)とし、当該調査の公平性・中
立性を図る。
○ 構成員は、弁護士、医師、学識経験者、心理や福祉の専門家等とする。
○ いじめを受けた児童生徒及びその保護者に対して、適時・適切な方法で、
調査の進捗状況等及び調査結果を説明する。
(2)再調査の結果を踏まえた措置等
○ 教育委員会は、再調査の結果を踏まえ、指導主事や心理や福祉の専門家の
派遣等の支援を行う。(法第30条第5項)
○市長はその結果を議会に報告する。内容については、個々の事案の内容に
応じ適切に設定されることとなるが、個人のプライバシーに対しては必要
な配慮を確保する。